開く
TECHNOLOGY

全固体電池?バイポーラー電極?電気自動車(EV)の生命線、バッテリーをおさらいする【EVの基礎まとめ Vol. 1】

公開日:
更新日:
全固体電池?バイポーラー電極?電気自動車(EV)の生命線、バッテリーをおさらいする【EVの基礎まとめ Vol. 1】

EV(電気自動車)の性能が実用に耐えるレベルに達し、本格的な普及が始まった2000年代後半から現在に至るまで、その進化を支えてきたのがリチウムイオンバッテリー。その構造と制御について、MotorFan illustrated 192号(2022年10月)から抜粋してシンプルに紹介する。(情報は当時のもの)

TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI)

EVの走行に必要な電力量を、実用的なレベルで車載可能とするエネルギー密度をもつ電池は、いまのところリチウムイオンバッテリーを除いてほかにない。多くのバッテリーと同様に電解液という液体を利用しており、製造された瞬間から劣化が進むという、いわば“生モノ”。リチウムイオンは電解液に有機溶媒を用いていることで、高い電位(電圧)まで電気分解を起こしにくいという特徴があり、それゆえに定格3.7Vという電圧と、高いエネルギー密度を実現しているのだが、高温になると定格電圧であっても電気分解を引き起こす。

しかも一旦電気分解を起こしガス化してしまうと元には戻らない。そのため、リチウムイオンでは入出力電力からセル温度まで、さまざまな要素をモニターしながら、電解液の電気分解のような反応が起きないよう緻密に管理される。

バッテリーに求められる性能は電動技術の種類によって異なる。バッテリーの電力のみを拠り所に走行するBEVは容量、HEVはパワーアシストと回生ともに機敏な反応が求められるためパワーが重視される。じつはもっとも難しく悩ましいのがPHEV用途。容量とパワーがトレードオフに近い関係にある以上、程よいバランス点を見つけるしかない。

車両駆動用バッテリーの構造

下に示すのはホンダ・クラリティPHEVのバッテリーユニット。バッテリーはPHEV用のものだが、そのほかの構造的なものについてはBEV用のそれと共通。総電力量についても17kWhであり、BEVなみと言って良いレベルだ。

VDA2と呼ばれるパナソニック製の角型セル(27.3Ah)を64直列×2並列、合計168個を接続することで、ユニットとしての総電圧は310.8Vとなっている。セルの冷却は水冷式で、専用のウォーターポンプとラジエーターをもつ。

セル12個(2並列×6直列)をまとめたバッテリーモジュール。その底面には水路を内蔵した冷却プレートが配されている。上の写真では3つのバッテリーモジュールが並んでおり、右側のふたつの間には両者の電極を連結するバスバー(オレンジ色の樹脂でカバーされた銅の平板)が見える。
手前側のモジュール上面の黒い樹脂ケースの下にBMS(Battery Management System)が収められる。BMSはバッテリーを安全かつ長期間にわたって使用するために必要不可欠な、バッテリー専用のコントロールユニットだ。
モジュールの下から側面に突き出た冷却プレートとそれらをつなぐ水路、モジュール側面上方には、セルの温度や電圧を検出するための配線も見える。微小な電圧の挙動から充電状態を推定すべく、セル電圧はミリボルト単位で捉えられている。
冷却水のホースが集められる、バッテリーユニット中央部。ホースが並ぶ奥には高電圧の走行用バッテリーユニットから灯火などの電装品に用いる12V系へと電力を供給するための、DC-DCコンバーターが置かれている。

バッテリーセルの種類と特徴

著者
Motor Fan illustrated

「テクノロジーがわかると、クルマはもっと面白い」
自動車の技術を写真や図版で紹介する、世界でも稀有でユニークな誌面を展開しています。
http://motorfan-i.com/

改めておさらいするEVの基礎

PICK UP