スズキが市販モデル「バーグマン400 ABS」を改良し挑む水素エンジン開発。水素ならではの扱いにくさとは。|人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYA
人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYAでスズキが目玉として展示したのが、「バーグマン400 ABS」改良モデルだ。2輪用水素エンジンの開発は、水素ならではの扱いにくさに苦戦しながらも幾多の困難を乗り越え形になりつつある。ガソリンエンジンのハードを流用した水素エンジン開発における技術的な課題について、展示担当者にうかがった。
TEXT&PHOTO:石原 健児(Kenji Ishihara)
主催:公益社団法人自動車技術会
スズキが開発に力を入れる「2輪用水素エンジン」
スズキの展示ブースを訪れると、燃料タンクがむき出しになった二輪のカッティングモデルが目に飛び込んできた。「展示しているのは試験車両です。市販モデル「バーグマン400 ABS」に70MPaの水素タンクと水素エンジンを搭載しています」二輪事業部 二輪営業・商品部の西本雄二氏が開発の経緯を教えてくれた。
今回の「水素エンジン バーグマン」は水素エンジンの燃焼を調節しやすいCVTを採用している。搭載した高圧水素タンク(70MPa)はベース車両のガソリンタンク同様に車両下部に配置。タンクのすぐ上に水素充填口を設けた。
エンジンは車両後部に搭載。車両の取り回しを考慮し、水素タンクは斜めに配置、ホイールベースの拡大を最小限に抑えている。エンジンは、エアークリーナーやスロットルボディなど、ベースエンジンの部品を可能な限り流用。インテークパイプは新作し、水素のインジェクターをポート噴射の形で取り付けた。燃料圧力は、ベースとなったエンジンの2倍以上に設定している。
開発スタートから約2年で実車走行を実現
「水素エンジンの開発を開始したのは2021年です。タンク容量は10リットル、走行距離は満タンで数十キロメートル。開発から約2年後、2023年末にテストコースで実車走行を行いました。ガソリンエンジンに対して、水素エンジンの効率は7割ほどです。現在は開発時に明らかになった課題をベンチテストを行いながら整理している状況です」と西本氏は現状を語った。