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エンジンテクノロジー超基礎講座044|ホンダの作った最後のディーゼルエンジン[N16B]

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エンジンテクノロジー超基礎講座044|ホンダの作った最後のディーゼルエンジン[N16B]

それまでの2.2ℓDEからダウンサイジング、1.6ℓの排気量で登場したホンダのディーゼルエンジン。残念ながらすでに退場してしまったが、当時のトレンドを盛り込んだ意欲作である。デビュー時のレポートを振り返ってみよう。(記事初出:2020/9/25)

EARTH DREAMS TECHNOLOGYの目玉のひとつが、この1.6ℓ直4ディーゼルターボだ。「世界最軽量小型ディーゼル」で、ディーゼルのダウンサイジングという世界的な技術トレンドの先頭を走る意欲作だった。

それまでの2.2ℓ i-DTECよりパワートレーン全体で50kg軽量化されたという。i-DTECもアルミブロックだったが、この1.6ℓエンジンはオープンデッキブロック(従来はクローズドデッキ)となったのがポイントだ。この世界最軽量骨格にトータル熱マネージメント、ガソリンエンジン同等まで下げたフリクションなどで環境性能(EURO6対応)とFUNを両立させた。「運転して楽しいディーゼルエンジン」だとホンダは説明していた。

ホンダの作った最後のディーゼルエンジン ターボチャージャー

ターボチャージャーは、小型高効率な可変ベーンタイプを採用。最大トルク300Nmだが、350Nmまでは視野に入っていたという。このエンジンのもうひとつのポイントは、LP-EGR(ロープレッシャーEGR)システムを採用したこと。HP(ハイプレッシャー)との切り換えが可能で、VWの2ℓBlueTDIが先駆けたLP-EGRをホンダも採用したというわけだ。LP-EGRは燃費にもNOxの低減にも効果がある。

ホンダの作った最後のディーゼルエンジン シリンダーカットモデル

ピストンスカートが短いピストン。ピストンリングも低張力タイプにし、フリクションをガソリンエンジン並に下げている。また補機類の小型化、主運動系軽量化もフリクション低減に貢献している。排気後処理は、リーンNOx触媒を装備。EURO 6対応予定で、まずは欧州のシビックが搭載した。シビックに積んだ場合、CO2排出量は100g/km以下となり、当時の燃費トップランナーの仲間入りを果たせる性能だった。

ホンダの作った最後のディーゼルエンジン インジェクター
噴射圧180MPaのボッシュ製ソレノイド式インジェクターを持つコモンレールシステムを採用。従来のi-DTEC(N22B1)はピエゾ式200MPaのインジェクターだった。インジェクターの進歩で、低コストのソレノイド式でも十分に性能を確保することできるようになったためだと思われる。おそらくインジェクターの能力的には8回の多段噴射が可能のはずだが、当時は最大5回の多段噴射を行なっていたという。CO2排出量は、N22B1より15%以上低減している。

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