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エンジンテクノロジー超基礎講座049|5000rpmで走るディーゼルレーサーMazda6 SKYACTIV Clean Diesel Racecar

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エンジンテクノロジー超基礎講座049|5000rpmで走るディーゼルレーサーMazda6 SKYACTIV Clean Diesel Racecar

2013年のグランダムGXクラスに参戦し、クラスタイトルを獲得したマツダ6が日本上陸を果たした。アメリカ市場で「ロータリーのマツダ」から「ディーゼルのマツダ」へのスイッチを印象づけるべく開発されたマシンである。「スカイアクティブ・クリーンディーゼルレーサー」を名乗るだけのことはあり、エンジンは量産ベース。チューブラースペースフレームに載るカーボンファイバー製シェルを一部はがし、ディーゼルレーサーの「メカ」を観察した。
TEXT:世良耕太(SERAKota) PHOTO:山上博也(YAMAGAMI Hiroya)/世良耕太
*本記事は2014年2月に執筆したものです

マツダ6スカイアクティブDクリーンディーゼルレースカーは、全12戦で行なわれる2013年のグランダムGXクラスにエントリーし、70号車が4勝、00号車が5勝を挙げ、クラスタイトルを獲得した。車名から想像がつくように、量産スカイアクティブDと密接にリンクしたレーシングカーである。

20B型の3ローター・ロータリーエンジンを積んで参戦していたRX-8グランダム仕様のベース車両が2012年で生産終了になるため、その後継モデルとして選ばれたのがマツダ6(日本名アテンザ)だった。それもディーゼル。マーケティング的には、投入が予定されているマツダ6のディーゼル仕様をプロモーションする意味で意義がある。「ロータリーのマツダ」から、「ディーゼルのマツダ」へのスイッチだ。

フロントアクスルの後方にエンジンを縦置きに搭載。量産車のイメージを残したレース専用車両における定石どおりのレイアウト。インタークーラー用の流路はエンジンルームと切り離され、独立している。これもレース専用車両に一般的な設計だが、自然吸気エンジンの場合はこの専用流路をラジエーター用に使うのが一般的。

横置きから縦置きにスイッチするものの、マツダ6グランダム仕様が積むエンジンは、2.2ℓの排気量も、直列4気筒のシリンダー数/配列も変わらない。2ステージターボな点も同じだ。参戦を支援するマツダ・ノース・アメリカン・オペレーションズの発表によれば、エンジンを構成する全パーツ数の51%がオリジナルであり、重量で見れば61%が純正部品にあたるという。

排気系統の上流に高圧ターボ、下流に低圧ターボを置く。直4エンジンのためか左右方向にスペースの余裕があり、窮屈そうには見えない。
フロントバンパー右コーナー部の背後にエアクリーナーを置き、エンジンルーム内に漂う新気を吸い込んでいる。吸い込んだ空気はまず低圧用ターボチャージャーに向かう。

エンジンも車体も、開発はフロリダ州コーラルスプリングスに拠点を置くスピードソース(Speed Source)が行なう。前モデルのRX-8のみならず、その前のRX-7の時代からマツダの車両を用いてレース活動を行なってきた。その熱意と専門知識を見込んでの指名である。エンジンに関する大物部品では、ブロックとヘッドは量産そのままだが、ウェットサンプをドライサンプに変更。ピストン、コンロッド、クランクシャフトは耐久性の高い仕様に置き換えている。2ステージのターボチャージャーは量産と同じハネウェル/ギャレット製だが、レース向けのカタログ品に置き換えた。

外観はマツダ6のイメージを色濃く受け継いでいるが、まったく同じ、ではない。マツダ6に見えるようにスタイリングしているのだ。日米のデザイナーが協力し、量産マツダ6のイメージを受け継ぎつつ、レーシングカーとしての機能を成立させている。ボディはカーボンファイバー製。車体はチューブラースペースフレームである。前作RX-8と基本構造は同じだ。スカイアクティブD・グランダム仕様が発生する400hp/445lb-ft(603Nm)の出力/トルクは、トルクチューブを通じてリヤに搭載する6速シーケンシャルギヤボックスに伝えられる。

高圧燃料システムはボッシュ製。留まっているべき箇所が振動で緩んで燃料が噴き出すといったトラブルも経験したが、短期間に解決。振動対策に苦労した跡が見える。
インタークーラー用の空気は上部のグリルから取り入れる。デブリを拾わないよう網目の細かいグリルを配した下部はラジエーター用のインテーク。

参戦カテゴリーを制したマツダ6・グランダム仕様は、グランダムシリーズに参戦した最初のディーゼルエンジン搭載車両となり、デイトナ24時間に参戦した最初のディーゼルレーサーとなった。シリーズの一戦にはインディアナポリスも含まれていたが、インディで勝利した最初のディーゼルエンジン搭載車両という記録は残したものの、「参戦」に限れば過去に例があった。1952年、カミンズ・ディーゼル・スペシャルが、インディ500に出場し、ポールポジションを獲得している。

燃料タンク(設計はスピードソースが行ない、ATLに製造を依頼)へのアクセスを見る。タンクの容量は14.5ガロン(約55ℓ)。精肉工程で出るバイオディーゼルを使用。
著者
世良 耕太
テクニカルライター

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめとするモータースポーツの取材に携わる。10年間勤務したあと独立。モータースポーツや自動車のテクノロジーの取材で欧州その他世界を駆け回る。

部品サプライヤー・自動車メーカーのエンジニアへの数多くの取材を通して得たテクノロジーへの理解度の高さがセリングポイント。雑誌、web媒体への寄稿だけでなく、「トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日」(著)「自動車エンジンの技術」(共著)「エイドリアン・ニューウェイHOW TO BUILD A CAR」(監修)などもある。

興味の対象は、クルマだけでなく、F1、建築、ウィスキーなど多岐にわたる。日本カー・オブ・ザ・イヤー2020-2021選考委員。

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