glafit × Open Street:特定小型原動機付自転車のシェア事業を2024年1月から開始【ジャパンモビリティショー2023】
「ハイブリッドバイク」メーカーとシェアモビリティ事業者が電動バイクを共同開発
これまで紹介してきたように、「ジャパンモビリティショー2023(JMS)」では自動車メーカー以外の企業による電動モビリティへの進出が目立った。東ホールに設けられた「次世代モビリティ関連エリア」には、クルマ(EV)以外にも様々なモビリティの展示が見られた。電動バイクメーカーのglafit(グラフィット)とシェアサイクル事業者のOpen Street(オープンストリート)は、共同開発した電動自転車を使用したビジネスに乗り出すことを発表した。
「ハイブリッドバイク」という考え方
グラフィット(和歌山県)は、2017年にクラウドファンディングを利用して「ハイブリッドバイク」を発売した。現行モデルのGFR-02は、0.25kWのバッテリーを搭載し最高速度30km/hで走行する原動機付自転車、いわゆる「原付」だ。一般の原付と違うのは、自転車同様のペダルを備えている点。スイッチを切り替えることで完全な自転車としても使用できることから、同社では「ハイブリッド」バイクと呼んでいる。
当然だが、原付として乗る場合にはヘルメットの着用や車道の走行、最高速度30km/hの遵守が求められる。自転車として走行中には、モーターの電源が入らない制御が組み込まれている。ナンバープレートを覆うシャッター状の機構も設けられており、周囲の歩行者から誤解を受けない仕組みとなっている。
「特定小型原動機付自転車」という分類
JMSで初公開された「NFR-01」は、今年7月の法改正で設けられた「特定小型原動機付自転車」に分類される。出力500Wのインホイールモーターを後輪に装着し、最高時速20kmで走行できる。使用条件により大きく異なるというが、1回の充電でおよそ40kmの走行が可能とのことだ。前後輪共にディスクブレーキが備えられており、制動性に配慮したことはうかがえる。
最高速度20km/hのモードでは、一般の原付同様に車道を通行しなくてはならない。スイッチを切り替えて「歩道可」モードにすると、最高速度は6km/hに制限される。特定小型原動機付自転車の中でも、「特例特定小型原動機付自転車」となり基本的には一般の自転車と同じ区分を走行する。
「特例」特定小型原動機付自転車として走行する場合は、前後に2灯ずつ備えられている表示灯が緑色に点滅する。一方、最高時速20kmの「車道専用」モードに入っている時には、点滅ではなく常時点灯に変わる。(7月に改正された「道路交通法」および「道路運送車両の保安基準」が定めている。)
シェア事業を始めるオープンストリート
2024年には一般向けに発売される計画だが、それに先行して来年1月からシェアリングサービスが開始される。ビジネスを運営するのは、「HELLO CYCLING」ブランドでシェアサイクル事業を行っているオープンストリート。工藤智彰CEOは、「2024年1月から首都圏にNFR-01を配置していき、年間3000台の投入を計画しています」と話す。同社は超小型EVや電動スクーターのシェアリングサービス「HELLO MOBILITY」も運営しており、「あらゆる交通結節点に、環境配慮型のマルチモビリティステーション設けたい」と同社の展望を語っていた。
電動アシスト自転車よりもスピードは出ない
法律の改正以後、電動キックボードの危険性を指摘する声が少なくない。NFR-01も同じ特定小型原動機付自転車に分類される。このモデルをシェアサイクルとして使用するにあたっての安全性についてオープンストリート尋ねた。
石崎秀二COOによると、「電動アシスト自転車の場合、日常的な使用における速度がだいたい(時速)24kmと言われています。NFR-01の場合、車道走行時でも時速20kmまでしかスピードは出ません。電動アシスト自転車と比較しても、危険性が高いとは考えていません」とのことだ。
安全な走行に対する啓蒙は急務
「特例」も含め、特定小型原動機付自転車に2人乗りはできない。自転車のように前後に子供を乗せることはなく、ブレーキも効きが良さそうなシステムが採用されている。特定原付の方が電動アシスト自転車よりも安全性が高いと言える部分はあるかもしれない。
一方で、車道における走行には危険性が伴うケースもあるだろう。16歳以上であれば運転免許が不要なため、例えば原付に義務付けられている「2段階右折」などのルールを知らない運転者は少なくないだろう。昨今では、一般の自転車についても走行区分の理解不足や危険な運転による事故が問題になっている。
オープンストリートは、一般消費者に対する特定原付に関連したルールについての啓発活動にも力を入れているという。「安全に移動できる街づくりに貢献したい(石崎COO)」という同社の取り組みに期待したい。