小糸製作所:12個のLED素子の性能を飛躍的に高める【ジャパンモビリティショー2023】
夜間の視認性を高めたい。しかし対向車や先行車への防眩も確保したい。小糸製作所のブレードスキャンADBはその両得を図るユニークなシステムである。
[西3・4ホール 小間番号W3303]
ハイビーム/ロービームという言い方は皆さんもよくご存じのとおりだが、じつは基本的な自動車用の前照灯はハイビーム状態がデフォルト。しかしそうすると向かい合う車や先行する車両がまぶしくて走れないので、そのときはロービームに切り替える、というのが現実的な使い方である。
LEDヘッドランプはその防眩の仕組みとして、複数個並べたLED素子のうち「まぶしいと思うであろう存在がある照射エリアだけ素子をoffとする」という手段を取っている。たとえばこれまでの製品では12個の素子があり、そのうちの3番と6番を防眩のために消して——という具合だ。
しかし「消したエリアの受け持ち範囲」が広すぎるというジレンマが生じてきた。この受け持ち範囲を小さくしたいなら素子の数を多くしていくという解決策があるが、当然ながら制御は複雑となりコストも上昇する。そこで小糸製作所は素子から発せられる光を可変角度を持つミラーで反射、ひとつの素子が照射する範囲を飛躍的に広くすることに成功した(LiDARのようなイメージか)。実に、300個の素子を並べたときと同等の照射性能を実現しているという。
これを防眩にどう生かすかといえば「照射したくないエリアのミラー角度のときだけLEDを消す」のである。ミラーは高速で回転しながら常に左右に振れているから、例えば前方2時の角度に対向車がいる場合はその角度にミラーが向いたときだけLEDを消灯する。On-Offの反応に優れたLED素子だからこその芸当とも言えるだろう。
小糸製作所ではさらに、16,000個のLED素子を並べた次世代型も提案。こちらはミラーなどの可動部を持たない「もうそのまんま」という仕様である。特別にユニットを見せていただいたが(撮影は不可だった)まさに「もうそのまんま」という印象。気になるのは消費電力と熱対策だが、それらを含めて開発を進めている最中だと説明してくれた。