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IAT/ヤマト・インダストリー:樹脂製品メーカーが電動モビリティに新規参入【ジャパンモビリティショー2023】

自動車メーカー以外の企業がつくったEV③:異業種からEモビリティ事業への参入

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IAT/ヤマト・インダストリー:樹脂製品メーカーが電動モビリティに新規参入【ジャパンモビリティショー2023】
樹脂部品製造を行ってきたヤマト・インダストリーが、自動車開発を行うIATと組んでEモビリティに事業に参入。

10月25日(報道関係者向け)に始まったジャパンモビリティショー2023(JMS)では、自動車メーカー以外の企業によるEVの展示が特徴のひとつと言える。埼玉県川越市のヤマト・インダストリー(ヤマト)は商用車「EV48」を出展した。OA機器などに使用される樹脂部品事業に携わってきた同社は、「JEMY(Japanese Electric Mobility by Yamato Industry)」ブランドを立ち上げて電動モビリティ事業に参入することを発表した。
ヤマトは昨年末、自動車エンジニアリング会社であるIATと資本提携を行った。今後は、IATが開発したコンポーネンツを活用し、EV関連事業を国内で展開していくという。
[東7ホール 小間番号E7207]

配送用途専用に開発されたEV

「EV48」のベースとなったのは、IATが開発を行った商用EV。中国の「金琥汽車(JENHOO Auto)」が今年の春から量産を開始しているそうだ。これに日本市場のニーズに基づく変更を加えてヤマトが輸入し、JEMYブランド第1号として事業者向けに販売する。

日本向けに仕様変更されたモデルを「EV48」としてヤマトが輸入し事業者向けに販売する。
ヤマトの池添洋一取締役が「JEMY」ブランドの立ち上げを発表した。

EV48は当初から商用EVとして開発されているため、デリバリー用途に最適化されているのが強みとのことだ。ヤマトの柳井克之取締役は、「人員輸送を考えず、設計段階から貨物専用に割り切ったB to B専売車です」とコンセプトを説明する。ロングホイールベースのボディと、リヤにモーターを搭載するパッケージングによって広くフラットなフロアを実現している。

貨物専用車両として開発されたEV48。運転席と荷室を分けるスライド式のパーティションなど、使いやすさに配慮されている。
モーターやホイールベース、ボディ形状など、商用バンに必要な要素を織り込んだパッケージングだという。

助手席側はBピラーレス構造を採用しており、側面から幅や長さのある荷物の積み下ろしができる。日本仕様はハイルーフとフラットフロアを活用して、荷室内の完全なウォークスルーを実現している。「配送作業者が前屈みになることなく、自然な姿勢で荷室内を移動できるため身体的負担が軽減できます」と柳井氏は働く人に焦点を当てたそのメリットを強調する。

商用車としてゼロから開発されたところに強みがあると柳井氏は説明する。
Bピラーがなくスライドドアの開口部が広いため、長尺物も載せやすい。
ハイルーフとフラットフロアによって、配送作業者の身体的負担を軽減する。

フルサイズピックアップトラックも電動化?

ヤマトとIATのブースでは、大柄なショーカーも目をひいた。「T-MAD(ティーマッド)」は、IATがグローバル市場に向けて開発力を訴求する目的で製作したコンセプトカーだという。電動フルサイズピックアップトラックのこのEVは、IATが独自開発したEVプラットフォームを採用している。前後に合計600kWの高出力モーターを搭載し、1回の充電で600kmの走行ができるとのことだ。

電動の大型ピックアップトラックのコンセプトカー「T-MAD」。日本では初公開となる。
T-MADは、ヤマトのパートナーであるIATが独自開発したEVプラットフォームをベースにしている。

デザインを取りまとめたSN DESIGN PLATFORM社の青木護ダイレクターは、「デザインコンセプトは、宇宙を旅するスペースシップをインスピレーションとしました。エクステリアは、“一目見たら忘れない記憶に残る形”に仕上げました」と言う。

デザイナーの青木氏は「一目見たら忘れない」造形に仕上げたと言う。
ドライバーズシートはセンターに位置している。

インテリアは、「スペースシップの雰囲気を表現する為、シートレイアウトを菱形の特徴的なものにしています。また、ドライバーはセンターポジションに座ることで、コクピット感を演出するとともに運転時の視認性を高めています」と青木氏は話す。まったく量産を意識しない伝統的な「コンセプトカー」であるT-MADだが、ピックアップトラックの新しい可能性を示すメッセージは強く伝わる印象を受ける。

SF映画に出てくる宇宙船のコックピットを思わせるインテリア。
ピックアップトラックとして、荷台はしっかりと設けられている。

変革期の真っただ中にあるモビリティ産業

実用的な量産モデルであるEV48と純粋なコンセプトカーのT-MAD。このブースでも、興味深い2台のEVを見ることができた。前回までの東京モーターショーから「ジャパンモビリティショー」に代わった今回。モビリティ産業が変革期にあることを、多くの来場者が感じるだろう。

対照的な2台のEVを出展したヤマトとIAT。

ヤマトは今後、既に稼働している内燃機関搭載のトラックやバスをEVに改造するビジネスも計画している。そのほか、EV用バッテリーのリユースや、事業用・家庭用の蓄電池ビジネスへも参入する予定だという。

ファブリックと合皮、コンビネーションの表皮が貼られたシートの質感は悪くない。
助手席の背もたれを前に倒せば、ドライバー用の机・テーブルとして使用できる。

ジャパンモビリティショー2023:テクノロジーレポート

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