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SAMPO Inc.:「服」以上「家」未満。Z世代の「移動」もできる「住まい」とは?【ジャパンモビリティショー2023】

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SAMPO Inc.:「服」以上「家」未満。Z世代の「移動」もできる「住まい」とは?【ジャパンモビリティショー2023】

「モーター」あらため「モビリティ」を冠した今回の「ジャパンモビリティショー2023」、その真骨頂を示すのが西展示棟1階の「Tokyo Future Tour」だ。そこに集うのは、従来のクルマの範疇を超えた移動機器の数々。鉄道車輌、空飛ぶクルマはもちろん、月面探査車から椅子型のマイクロモビリティまで、ありとあらゆる形態の「動くモノ」が登場した。そしてその傍らに厳かに鎮座する、何やら不思議な木造の「箱」。巨大な神棚にも見える風情だが、近づくと壁には何やら異形の機械部品の数々が装着されている。これはいったい。。。出展するSAMPO Inc.に、「箱」に込めた思いを聞いてみた。
TEXT&PHOTO:渡邉 生(Sei WATANABE)

「これは『部屋』です。実際に人が住んでいるものを、今回ここへ運びました」

聞けば既に今年から、都内世田谷の某所で海外出身の女性が居住しているという。展示している「Mobile Cell」の広さは約1畳半、会場のものは展示向けに室内に物品を並べてあるが、天井には照明、壁には窓のほかウィンド型エアコンも装備され、最小限、居住空間の要件を満たしている。

「ただし、トイレ、シャワー、キッチンはありません。実はこのCellは、木造の古民家の横に設置されていて、生活のインフラはそちらを使っています」

約1.5畳の室内空間。天井が高いせいか、窮屈さは感じられない
実際に住居として使用されるMobile Cell(SAMPO Inc.提供)

「インフラに縛られると生活が苦しくなる。インフラと切り離して、居住空間だけを完結させる。そして、その外観には個性を与えるんです」

独立した居住部は、軽トラに積んで移動もできる。今回もそのようにしてここまで運んできた。

軽トラックの荷台に積んで持ち運べる仕様も

SAMPO Inc.(村上大陸CEO)は、大工、建築士、それにカメラマン、コックなど様々なバックグラウンドをもつ若手クリエーター集団で、2016年の活動開始後、これまで既に40棟以上の様々な「生活のかたち」を具現化してきた。

「同じ形のものは、ひとつもありません」

サイズや形態、装飾も、オーナーごとに全く異なるという。今回展示されているCellにも、正面上部の壁に不思議な機械部品の数々が見える。よく見れば、なんと乗用車の部品ではないか。

軒下を飾る部品群。これらは展示のための装飾ではなく、実際の居住時にも装着されているという

左隣の台形状の大きなオブジェにも、電装部品らしきものがいくつも装着されている。

「Z世代はこういうモノに惹かれるんです。最初からこの形を狙って作ったのではなく、要求される機能を実現しようとして作ったら、最後こういう形になった、そこが良いんです。作り手の思いが伝わってくる」

しかし、機能そのものに頓着しないのもZ世代。この台形状の物体、実はスピーカーである

「ここを回すと音量が変わります」

音量を変えるボリウムのツマミは、オルタネータのローターコイル。「今回来られた方には、機械に詳しいエンジニアの方も多いので、『これは普通手で触る部品じゃないだろう』と言って不思議がる」のだそうだ。

この世に一台しかないスピーカーボックス
音量調整はオルタネータのローターコイルで
足元のウーファーの部位には船の丸窓。中にはなぜか小さな飛行機。大人はまず気づかないが、子供は見つけて喜ぶという

実は今回展示のプロジェクトは日産とのコラボレーション。部品の提供や技術サポートを受けた。壁の部品類は日産が社内で使わなくなった「MURANO」の車輌を一台まるごと提供したもの。「こういう用途で車輌を引き渡すのは社でも初めて」とのことで、いろいろ手続きの苦労はあったが、クルマ一台分のパーツは「宝の山」で、まだまだ多くのパーツが控えている、という。また、Mobile Cellに電力を供給するバッテリーも電気自動車「LEAF」搭載品の再利用。加えて、外壁と屋根の白色の塗装は、放熱効果を高めた特殊なセラミックを用いたもので、これも日産からの提案によるものだ。

「この塗装で、外気温に比べ室内を6℃ぐらい下げられます。ご存じの通り今年の夏は厳しかったですが、意外とエアコンは使わずに済んだらしいですよ」

日産とSAMPO、両者ロゴ入りのポスター
家の電力は日産LEAFの再利用バッテリーから

よく見れば壁は10センチ近い厚さで、中には十分な断熱材が組み込まれているという。思った以上に見えないところでハイテク武装しているのだ。が、説明員は強調する。

「我々は『ハイテク』を、『ハイセンス・テクノロジー』という意味で使っています」

単なる「高度な技術」ではダメ、「優れたセンス」で使われて初めて、「ハイテク」だというのだ。その一方で、部材の大半はホームセンターで手に入り、希望者には設計図が開示されるので、実際に高校生が作った例もあるという。ハイセンスなテクノロジーは「オープン」であるべし、ということらしい。

連日、世代を問わず多くの来場者が説明を聴いていた

最後に、説明員が聞いたという、来場者の感想を記しておこう。

「今回、会場でたくさん『未来のモノ』を見たけど、だいたいは想像の延長線上で、それを確認出来たな、って感じ。でも、これだけは違った。Mobile Cellは全く思いつかない未来だ」

予想もつかないものと出会える。だからこその「未来」。それを実感できた「Future Tour」だった。

ジャパンモビリティショー2023:テクノロジーレポート

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