豊田自動織機:CFRPから糸をリサイクルせよ!【ジャパンモビリティショー2023】
一度作ったらその後は廃棄するしかなかったCFRP。製品の性能が高いだけにいかにももったいない。しかし豊田自動織機がついにリサイクル技術を確立したようだ。
[西3・4ホール 小間番号W3203]
あらためてCFRP:炭素繊維強化プラスチック製品の構造とは、よく鉄筋コンクリートに例えられる。引っ張りに強い(けど圧縮には弱い)鉄筋と圧縮に強い(けど引っ張りには弱い)コンクリートの長所を掛け合わせ補完することで、強固な構造体とするのが鉄筋コンクリートの仕組みで、CFRPも同様に引っ張りに強い炭素繊維と圧縮に強い樹脂とを掛け合わせている。
さらに詳しくいえば、炭素繊維に染み込ませる樹脂には大別して2種がある。ひとつは高温で化学反応させ硬化させるもの=熱硬化性樹脂、もう一方は常温では固体/熱を加えると溶融し半固体液状になるもの=熱可塑性樹脂である。前者は一度硬化すると液状に戻すことはできないが、後者は熱を加えると再び液状にすることができる。本件のリサイクルの方法をきいたところ、熱を加えて樹脂を除き糸を取り出す、と説明していただいた。熱可塑性樹脂型CFRPでの適用だろうか、それとも熱硬化性樹脂の除去に目覚ましいブレークスルーが得られたか。
本件の長所は、長繊維のまま取り出せるということ。これまでのCFRPのリサイクルの方策としては、極めて高温下に再生品を置き熱硬化性樹脂を蒸散させるというものがひとつ挙げられたが、どうしても100%の樹脂除去はできず繊維内に残存、リサイクル材として使用時にはそれが樹脂の含浸を妨げ性能をフルに発揮できないという悩みがある。残存樹脂をさらに取り除く方法もあるが、そうすると炭素繊維自体にダメージが及ぶという別の悩ましさが現れる。破砕して除去率を高めるという手段では短繊維となってしまい、引っ張り強度に優れる炭素繊維の長所を活かしきれない。という具合にあちらを立てればこちらが立たず、というのがCFRPリサイクルの課題である。
豊田自動織機によれば、長繊維のままで取り出したリサイクル材は弾性率90%(対バージン材)/強度70%(同)という。詳細についてブースでうかがうことはできなかったが、ぜひ詳しく訊いてみたい。なお、同社は本技術で「JEC COMPOSITES INNOVATION AWARDS」(Circularity & Recycling部門)を受賞している。