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エンジンテクノロジー超基礎講座052|名機コスワースDFVの各部を詳細に眺めてみる

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シリンダーブロックはアルミ合金製のハーフスカート型でウェットライナー式。シリンダーライナーは試行錯誤を経ながらも長く鋳鉄製が使われ続け、1970年代末になってニカジルメッキ処理のアルミ合金製が登場。オイル消費やメンテナンスの面で劇的な改善があった。
このギヤトレーンのホルダーでもあるフロントカバーの内側。
写真の左にあるのが、クランクケース右脇に配置されたウォーターポンプ(左側)とオイルのスカベンジポンプ/遠心分離器で、間にクラッチが入る。写真の右は、クランクケース左脇に置かれたもうひとつのウォーターポンプ(上側)とオイルのプレッシャーポンプ。
Vバンクの間に配置されたトランジスター式点火コイル/ディストリビューター(右側)と燃料のメータリングユニット。基準点火時期は上死点前35°。点火系は1970年代後半にはCDI式に。燃料ポンプは電磁式(始動時~2000rpm)と機械式(2000rpm以上)のツイン。
初期のコスワース純正カムシャフトは鋳鉄製で、鋳造時にカム面になる部分を急速冷却して硬度を高めるチル化処理を施して作られた。チューニングを進めていくなかでコスワースや各エンジンチューナーが様々なプロフィールのものを試していったのは当然だが、バルブサージングの問題が常につきまとった。
今日的な目からすれば、かなりロングデッキのピストンと短いコンロッド。ピストンはアルミ鍛造で、F1用DFVは最後まで3本リングだった。コンロッドは鋳鋼製で、大端部ベアリングはクランクと同じく、鉄のベースに鉛とインヂウムの被膜を生成したもの。コンロッド長とクランクウェブ長の比率は4.1:1。
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著者
世良 耕太
テクニカルライター

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめとするモータースポーツの取材に携わる。10年間勤務したあと独立。モータースポーツや自動車のテクノロジーの取材で欧州その他世界を駆け回る。

部品サプライヤー・自動車メーカーのエンジニアへの数多くの取材を通して得たテクノロジーへの理解度の高さがセリングポイント。雑誌、web媒体への寄稿だけでなく、「トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日」(著)「自動車エンジンの技術」(共著)「エイドリアン・ニューウェイHOW TO BUILD A CAR」(監修)などもある。

興味の対象は、クルマだけでなく、F1、建築、ウィスキーなど多岐にわたる。日本カー・オブ・ザ・イヤー2020-2021選考委員。

エンジンテクノロジー超基礎講座

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