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【海外技術情報】KTM:吸気側に可変バルブタイミング機構を初搭載した最新仕様LC8エンジン

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【海外技術情報】KTM:吸気側に可変バルブタイミング機構を初搭載した最新仕様LC8エンジン

一昔前には破産申請にまで追い込まれていたオーストリアのモーターサイクルメーカーKTMだが、今では総合メーカーとしての陣容をしっかりと整え、小排気量から大排気量まで、またオフロードからオンロードまで、高性能で機能的なモデルをラインナップしている。そんなKTMのネイキッドシリーズのフラッグシップモデル「1390 スーパーデューク R」が搭載する水冷V型2気筒エンジンが、2024年モデルでアップデートされた。

新しいLC8を搭載した「1390 スーパーデューク R」が登場

「1390 スーパーデューク R」はKTMが"THE BEAST"=野獣と呼ぶ、ネイキッドモデル。その「1390 スーパーデューク R」が搭載するのが、排気量1,350ccの水冷V型2気筒DOHCエンジン(通称LC8)。

そのエンジンを搭載するのは極めてコンパクトなクロモリ鋼管製スペースフレーム。エンジンはねじれ剛性に対するストレスメンバーとしても活用される。上級版の「1390 スーパーデューク R エヴォ」の足回りには、傘下におさめているWP社製の最新世代WPセミアクティブテクノロジー(SAT)を搭載。可変ダンピング用電子制御磁気バルブを備え、公道における快適性を与えつつ、サーキット走行にも対応する幅広い調整機能を有している。

「1390 スーパーデューク R」の最高出力は140kWで車両重量は201kg。野獣と呼ぶに相応しいKTMネイキッドシリーズのフラッグシップモデルである。

LC8エンジンがアップデートされた

エンジンを見て行こう。KTMでは水冷単気筒のLC4(Liquid Cooled 4バルブ)と、V型2気筒のLC8(Liquid Cooled 8バルブ)を長らく使用し続けており、これが一つのアイデンティティともなっている。LC8のバンク挟角は75度。排気量は前年までの1,301ccから1,350ccへとアップされた。

ボア×ストローク(mm)は110×71(mm)。ボアが108mmから2mm拡大された。残念ながら新LC8の詳細は未公開だが、前年モデルは13.6という高圧縮比を採用していた。

シリンダーヘッドには新設計のカムシフトが搭載された。吸気側に可変バルブタイミング機構を装備した。回転数に応じて2つの異なるバルブリフトを利用し、全域に渡ってパワーとトルクが上乗せした、とKTMは主張している。ハーレーダビッドソンでさえ新作エンジン(レボリューションマックス1250エンジン https://car.motor-fan.jp/tech/10018577 )の吸排気に可変バルブタイミング機構を搭載する時代なのだから、KTMの吸気側VVT採用は驚くに値しないことだろう。

バルブ材質も公式発表されていないが、KTMでは前モデルでも吸気側にはチタン製が用いられている(写真は2023年モデル「1290 スーパーデューク R」用チタン製吸気バルブ)。そのバルブの駆動方式についても公式発表はないが、画像をみると前年を踏襲してフィンガーロッカー式のまま。点火は当然のことながらツインスパークである。

「1390 スーパーデューク R」ではラムエア加圧も行われる。ヘッドライトマウントのボディの間に、わずかにエアインテークが見える。新LC8ではラムエアシステムとエアボックスを新設計して、空気をよりダイレクトに流すようにしたという。

これら改良を受けた新LC8の最高出力は140kW@10,000rpm、最大トルクは145NM@8,000rpmを誇る。

新LC8のハイライトは、ボアアップによる排気量アップと吸気側へのVVT搭載、それとラムエア新設計と言えそうだ。これにより最高出力を8kW向上させ、最新のEURO5+排出ガス規制をクリアさせている。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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