開く
NEWS

【海外技術情報】ルノーが解説。Software Defined Vehicle (SDV:ソフトウェア・ディファインド・ビークル)ってなんだ?

公開日:
更新日:
【海外技術情報】ルノーが解説。Software Defined Vehicle (SDV:ソフトウェア・ディファインド・ビークル)ってなんだ?

自動車の電化の進行とともに頻繁に耳にするようになった用語の一つが、Software Difined Vehicle(SDV:ソフトウェア・ディファインド・ビークル)だ。では一体このSDVとはなんだろうか? それを分かりやすくルノーが解説していたので、要約してお届けしよう。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

SDVとはなにか?

Software Defined Vehicle(SDV)とは、一元化されたアーキテクチャ、アップデート、それに新たなアプリケーションを統合して機能を強化することにより、車両の寿命全体にわたってアップグレードし続ける機能を指す。これはルノーグループのみならず、多くの自動車メーカーが準備している次の革命である。ソフトウェアにより定義される未来の自動車はスマートフォンと同じ原理で動作するが、その方法は遥かに複雑である。この新技術であるSDVは今後数年間でルノーグループの車両に装備される予定である。

SDVはナビゲーションと接続性の強化、リアルタイムでのアプリケーションのアップグレード、安全性と持続可能性の強化など、自動車がその寿命のなかで進化する可能性を提供する。そのすべては運転体験を改善するために行われる。今後も自動車は益々インテリジェントになり、コネクテッドになるため、ソフトウェアはその設計と進化の両方において、より重要な役割を果たすようになる。

車の継続的な更新

ルノーグループではFirmware Over The Air(FOTA)システムを介して、一部の車両のリモートアップデートを行っている。Clio、ZOE、Captur、およびArkanaのEASY-LINK マルチメディア・システムと、Mégane E-Tech electricとAustralのOpenR Linkが該当する。これにより車載システムの改善とパッチ適用がより簡単かつ迅速になり、車両の安全性が維持されている。
将来的にはSDVの柔軟かつスケーラブルなアーキテクチャにより、車両寿命全体にわたって新機能の迅速な開発と統合が可能になり、直接クラウドに、いつでもどこからでもアクセスできる安全なオンラインサーバーに統合できるようになる。

SDVの可能性はほぼ無限である。これら新サービスは車の予防保守(障害のリアルタイム検出)だけでなく、車内のパーソナライズ、バッテリー充電、それにインフォテインメントシステム管理をカバーするだろう。

SDVのメリットはなにか?

一つ目のメリットは、新機能へのリアルタイムアクセスである。車両寿命全体にわたって新機能をリアルタイムで追加することで、継続的に車両を「アップグレード」できる。アップグレードのオファーは、各ドライバーの運転習慣や好みに沿って、差別化されたものになる可能性がある。これによりユーザーエクスペリエンスが向上する。

二つ目のメリットは安全性の向上である。車両から収集された大量のデータはSDVが提供する人工知能に取り込まれ、車内の安全性が強化される。例えば、特定部品の磨耗や故障をリアルタイムで特定できるため、修理を予測したり、故障を直接修正することができる。いわゆる予知保全にSDVは役立つ。

三つ目のメリットは自動車の価値向上である。SDV技術を使用してクラウド経由で自動車をアップグレードできることで、車両そのものの価値を高める。購入したときは新型車両であっても、数年後には新機能が充実した車両に機能面で凌駕される。そうした車両の価値の低下を防ぐことができる。

SDVはどのように機能するのか?

現在の自動車は実に多くのオンボード・ソフトウェアを使用しており、それらを機能させるために、多くの電子コンピューター(プロセッサ)を使用している。現在、コネクテッド・カーには60~80台のコンピューターが搭載されており、そのすべてが照明や運転支援といった各機能専用になっている。これはECUの5,000万~8,000万行のソフトウェア コードに相当する。車両の様々な部分に多数のコンピューターが分散しているため、非常に複雑である。

SDVは強力かつ堅牢、そして柔軟な中央コンピューターを搭載する。この中央コンピューターは、各種センサー、特にドライバー・アシスタンス・システム(ADAS)、車体、シャーシ管理、それにマルチメディア・サービスと接続性から収集される膨大なデータを処理する。そして時間の経過とともに新しい機能を受け入れることもできる。ルノーグループは、長期間使用できる中央コンピューターを統合するために、クアルコムとその「スナップドラゴン・デジタル・シャーシ」ソリューションと協定を結んだ。

車両に新機能を追加するために、SDVはオペレーティングシステムに依存する。これはコンピューターやスマートフォンに似ているが、ダッシュボードに適合している。カーオペレーティングシステムの略で「CAR OS」と呼ばれている。

開発される新しいアプリケーションはアプリケーションストアで入手できるようになる。この「CAR OS」を共同開発するために、ルノーグループはSDVプロジェクトの主要パートナーであるGoogleと協力する。

SDVの新しい点は、自動車の使用に関連するデータ量の増加である。膨大な量の情報により、自動車の操作だけでなく、ドライバーの行動を特定して分析することができる。もちろんユーザーの個人データの管理と、サイバーセキュリティの側面が考慮される。

最後にルノーは「SDVは単なるビジョンではなく現実のものであり、ルノーグループはすでにこの新しい競争に参入している」と述べている。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

川島礼二郎の海外技術情報

PICK UP