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【海外技術情報】100%リサイクル可能=ゴム不使用のタイヤはトレッド面をチャックで張り替えることができる!

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【海外技術情報】100%リサイクル可能=ゴム不使用のタイヤはトレッド面をチャックで張り替えることができる!

産業界でも持続可能を高めるべく様々な取り組みが行われている。今回のテーマはタイヤ。ご存知の通りタイヤ生産において必ず行われる加硫は不可逆工程なので、廃タイヤを新タイヤの原料に使うことは不可能だ。タイヤがゴム製品である限り逃れることができない宿命だと考えられてきた。ところがタイヤ材料の循環を可能にする、ゴム不使用のタイヤがノルウェーの企業reTyre(リタイヤ)により市販されている。同社はreTyre製品は100%リサイクル可能であるとしている。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

持続可能なタイヤ製造販売を目指すreTyre

ご紹介するのは2015年に設立されノルウェーに本社を置くタイヤメーカーのreTyre(リタイヤ)。革新的なタイヤ設計とタイヤ生産設備開発を行っている。グリーンイノベーションに重点を置いた数多くの機関投資家から支援を受けている。2023年6月現在でreTyre製品は56種類あり、世界12か国で100以上のパートナーを通じて販売されている。

reTyreは2015年にノルウェー科学技術大学NTNUと共同でモジュラータイヤのプロトタイプを開発。以降、SINTEFやICPEといった研究大手と協力してテストと開発を繰り返した後、世界初となる自転車用モジュラータイヤシステムの特許を取得した。これに続いて、車椅子、ベビーカー、電動スクーターなどの車両向けにタイヤソリューションを開発、市販している。

reTyreが目指すのは、あらゆる点で史上最も持続可能なタイヤを製造すること。新素材の使用によりエネルギー効率が高く正確な製造が可能になり、reTyreはGHG(Green House Gas=温室効果ガス)排出量を最大82%削減して、100%再利用可能なタイヤを生産することができる、としている。

reTyreはタイヤ材料の循環を可能にする。

従来のゴムタイヤは、使用後に再成形して新しいタイヤを生産することができない。確かに「リサイクル」は行われているが、その大部分はタイヤを燃焼して得るエネルギー回収である。

reTyreは廃タイヤを新しいタイヤに完全に再利用できる材料と方法を利用して、循環経済構築に向けてパートナーと協力している。reTyre製タイヤに含まれる生物資源ベースのエラストマーは他産業で新しい製品を生産するための材料として容易に再利用できる。これにより使用済み材料の循環経済が実現する。

ゴム0%のエアタイヤ

reTyreはこれまでのタイヤ生産で使用できていなかった新素材の使用を可能にする、空気入りタイヤの新たな製造方法の特許を取得した。これによりreTyreはタイヤのエアタイヤのゴムを100%再利用可能な特別に作られた生物資源ベースの熱可塑性エラストマーに完全に置き換えることに成功した。reTyreは材料科学分野の世界的大手企業と協力して、タイヤの性能と持続可能性の限界を押し広げている。

バイオベースの熱可塑性エラストマーは、石油やその他の化石燃料ではなく、再生可能な生物資源から作られるゴム状材料の一種である。これらの材料は迅速に補充でき、有限の資源を枯渇させず、二酸化炭素排出量が低い。そのため従来の化石燃料ベースのエラストマーよりも持続可能である。

現在のエアタイヤ製造では加硫ゴムが使用されている。これは大気汚染への影響、有限な資源の枯渇、廃タイヤの処理が懸念されています。reTyre固有の製造技術により、優れた性能を備えた新素材を使用できるため、タイヤの寿命は大幅に延長される。重量を軽減できる。そして耐久性が向上する。製造に制限要因がないため、将来的には生分解性、発光性、自己修復性などの機能を持った材料が利用できる可能性がある。

reTyreの強みは独自開発した生産技術にある。それにより生物資源ベースの熱可塑性エラストマーをエアタイヤに使用できるようになった。reTyreの製品ラインナップは自転車向けがメインであり、子供用自転車、ベビーカー、車椅子、電動スクーターなどにも対応する。ご存知のとおり、ベビーカーや電動スクーター用タイヤとしては、樹脂製タイヤ(生物資源ベースではない)は既に市場で一定のシェアを持つ。一方で、自転車用の樹脂製エアタイヤは市場でも特異な存在といえよう。

自転車用エアタイヤに驚きの構造=モジュラーシステムを採用

独自の生産技術により生物資源ベースの熱可塑性エラストマーを自転車用エアタイヤに適用することに成功したreTyreだが、その製品もユニークである。『モジュラーシステム』と別部品となっているスキンを被せてチャックをしめる『ジップオンテクノロジー』を採用ことで、工具を使うことなく数秒でタイヤを変身させることができるという。

基本となるのはフルタイヤ『ONE』またはトレッドのない『BASE』。『One』はreTyreのクラシックバージョンであり、アスファルト上で優れたパフォーマンスを発揮する高速回転タイヤだ。『Base』はプレミアムバージョン。『Skin』を取り付けるための『ジップオンテクノロジー』が搭載されている。『Skin』の選択肢は豊富であり、『ONE』よりも遥かに軽量である。

『Skin』とは取り外し可能なトレッド面を有するパーツであり、様々なパターンがラインナップされている。ユーザーは路面状況や季節、また走り方の好みに合わせて、タイヤを数秒で適応させることができる。これがユーザーにとってのメリットだ。価格はreTyreネットショップから購入する場合、例えば『ONE』+『Skinグラベルチェイサー』の2個セット(車両1台分)で€179である。様々なパターンの『Skin』がラインナップされていると記したが、例えば『Skinウィンタートラベル』にはスタッドが装備されており、これは完全な冬仕様である。

『モジュラーシステム』には環境に与える付加が小さいというメリットもある。『Skin』のトレッド面が摩耗したら『Skin』のみを簡単に新品と交換できる。タイヤ全体を廃棄する必要がなくなり、材料の無駄を40%削減できる。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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