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【海外技術情報】ルノー:ICEをBEVに換装するサービスをキットメーカーと提携してルノーが公式に提供を開始

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【海外技術情報】ルノー:ICEをBEVに換装するサービスをキットメーカーと提携してルノーが公式に提供を開始

持続可能なモビリティへの移行において、特にヨーロッパの都市部では電気自動車(EV)が不可欠になりつつある。そんな今、ルノーが現存する内燃機関(ICE)車両を電気自動車(BEV)に置き換えるレトロフィット(換装)サービスを立ち上げた。レトロフィットとはなにか? それは合法なのか? 費用は幾らかかるのだろうか?
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

ICE→BEVの換装は比較的安価に実現可能

大気汚染を軽減するため、また地球温暖化対策として、EUはICEを減らそうとしている。数年後にはBEVのみにしたいという願望すら示している。だが、新車で販売されるBEVだけが解決策ではない。一つの比較的安価な代替手段はICEをBEVに変えるレトロフィット(換装)である。それは可能であり、合法である。
レトロフィットとはICE車両のガソリン/ディーゼルエンジンと燃料タンクを取り外して、それらを電気モーターとバッテリーに置き換えて電気自動車(BEV)に変える機械的な作業である。使用される電気モーターはバッテリーから直接、または燃料電池(水素)から間接的に、動かすことができる。

EVの改造は合法

2020年4月4日以降、このレトロフィット(換装)作業は認定された専門家によって行われる限り合法となっている。ただし、変更前後の車両の重量差は20%を超えてはならず、電気モーターの出力は元の燃焼エンジンの出力と同等でなければならない。車両登録の「燃料の種類/エネルギー源」セクションも変更される。このレトロフィット(換装)に使用されるキットは業者により承認されているため、車両そのものを再承認する必要はない(路上適性試験を受ける必要がある)。

ICE→BEVへのレトロフィット(換装)の実際

ICEをBEVに換装することで、複数のメリットを享受できる。スムーズな乗り心地、静かで信頼性が高い、メンテナンスが簡単で安価といった分かりやすいメリットのほか、登録と駐車が無料になる、低排出ゾーンおよび汚染の急増中区域で交通規制の対象にはならない、といったフランス特有のメリットも得られるようだ。
この換装サービスは発売後5年以上が経ったすべての車両(ガソリン車およびディーゼル車)に適用できる。

換装作業は認定された専門家によって実行される。プロセスには換装キットが使われる。作業時間はモデルにより異なるが、インストールに数時間から数日かかる場合がある。ブレーキシステム、ショックアブソーバー、ギアボックスはICE車に搭載されている部品が使われ、サービスは保証を付帯することができる。
改造費用は平均して1万5,000~20,000ユーロであり、フランスでは政府が財政援助を提供しており、補助金を受け取ることができる。

ルノーの商用車改造

ルノーグループとトルブ(旧フェニックスモビリティ)は、ルノーの商用車ラインナップ用レトロフィット キットを共同開発および販売するための戦略的パートナーシップに署名した。このパートナーシップはBEVに関するルノーグループの専門知識と産業ノウハウと、商用車の改造におけるフランスのパイオニアであるトルブの経験を結びつけるもの。

フランツで組み立てられたルノーマスターの最初のキットは2023 年から利用可能になる。

ルノーと象徴的なヴィンテージカーのレトロフィット

ルノーはレトロフィット(換装)キットメーカーと提携した最初の自動車メーカーである。キットメーカー「R-fit」は、ルノー4、ルノー5、初代トゥインゴのEV換装キットの販売を開始する。航続距離は約90kmに設定されている。ルノー5 レトロフィットキットは 2023年9月から利用可能になる。4Lキットは11,900ユーロで販売されるという。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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